ガス切断に用いる可燃性ガスと支燃性ガスについての基本知識
ガス切断に用いられるガスはアセチレンガスが主流ですが、近年ではLPガスが使われることもあるようです。
また、切断には酸素も欠かせません。
可燃性ガスと支燃性ガス(酸素)について自分の勉強のためガス溶接技能講習テキストに基づきまとめてみました。
可燃性ガス
可燃性ガスは様々な分類方法があります。
貯蔵状態、燃焼性、有害性によって分類されます。
貯蔵状態による分類
圧縮ガス
水素、CNG(圧縮天然ガス)、酸素など、常温では加圧しても液化できないガス。
そのためガス状のまま、継ぎ目のない容器に35℃で14.7MPaまたは19.6MPaという高い圧力で圧縮充填されている。
液化ガス
LPガス等の加圧すれば常温で容易に液化するガス。
または、液化酸素やLNGガス等のように、それぞれのガスの沸点以下の超低温にすれば液体となるので、超低温に保持された保冷タンクの中に液体の状態で保存されているガス。
海外から輸入されるLNGは、LNG輸送船の保冷タンクに貯蔵されて、大量に海上輸送されている。
溶解ガス
アセチレンガスがこれの代表。
アセチレンの加圧による分解爆発を防止するため、多孔物質のなかに溶剤を染み込ませ、常温で加圧し、溶解させて充填する。
燃焼性による分類
可燃性ガス
空気または酸素と混合したものに着火すると熱と光を出して燃焼するガス。
支燃性ガス
空気や酸素など、自ら燃えたり爆発したりすることはないが、可燃物の燃焼を支える性質を持つガス。
不燃性ガス
窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴンなど。
ほかの物質と反応しにくく、不活性ガスとも呼ばれる。
燃えている火炎を消す性質があり、消火用ガスとして使用されている。
有害性による分類
水素、アセチレン等は、それ自体は無害でも、多量に吸引することで窒息の危険性があるので、単純窒息性ガスと呼ばれる。
プラスチックなどが燃焼した際に発生するホスゲン、塩素、一酸化炭素、アンモニア、シアン化水素等は有害な毒性ガスである。
ガスの性状
ガスの比重
ガスには重さがあり、使用するガスが空気より重いか軽いかを知ることはとても大切である。
重いガスを使用すれば、ガスを出した際に下にたまり、爆発の恐れがある。
軽いガスの場合空気中に拡散されるが、狭い場所では天井にたまることもある。
全てのガスは一定圧力において、温度が1℃上下するごとに、元の体積の273分の1ずつ増減する。
従って、冷たいガスは重く、温められたガスは軽くなる。
このため、空気よりわずかに軽いガスでも、冷却されていると通常の空気より重くなる場合もある。
発火温度
外部から火炎や火花などの着火源なしに、燃焼または爆発を起こす最低の温度である。
空気中よりも酸素雰囲気中の方が発火温度は低くなり、危険性が増大する。
発熱量
一定量のガスが完全燃焼するときに生ずる燃焼熱を発熱量という。
火炎温度
火口に高温の火炎を形成した場合、この火炎温度が高いほど作業性は良くなる。
燃料ガスと酸素の混合ガスは、空気との混合ガスよりも800℃も高い火炎温度が得られる。
3000℃を超える火炎温度が得られるのはアセチレンのみである。
燃焼と爆発
燃焼
燃焼とは、可燃性物質が空気または酸素と反応して、火炎を生じ、熱と光を発することをいう。
燃焼が発生するには、以下の燃焼の3要素を満たさなければならない。
1.可燃性ガス
2.空気・酸素などの支燃性ガス
3.着火源
この3つが同時に存在すると燃焼が起こる。
爆発と爆発限界
可燃性ガスを放出または漏洩させて放置すると、空気や空気中の酸素と混合される。
そしてこの混合気に着火すると、混合気全体に高速で火炎が伝播する。
その爆発が起こる濃度の限界を爆発限界または燃焼限界という。
酸素と混合した混合気は、空気と混合した場合よりも爆発限界が広がる。
分解爆発
空気や酸素と混合しなくても、可燃性ガスの分解反応熱により火炎が伝播して起こる爆発。
アセチレンは代表的な分解爆発を起こすガスであり、危険を避けるため0.13MPaを超えて使用してはならない。
燃料ガスと酸素
アセチレン
カルシウムカーバイドに水を加えてアセチレンを発生させるカーバイド法によって製造されるほか、
石油を高温加熱して製造する熱分解法、メタンを原料とする燃焼法によっても製造される。
純粋なアセチレンは無色無臭であるが、カーバイドから発生したものは不純物により不快なにおいを持つ。
比重は0.91で空気より軽い可燃性ガスである。
水や溶媒によく溶け、アセトンやDMFには非常によく溶ける。
非常に不安定なガスであり、空気との混合では2.5%~100%、酸素との混合では2.3%~100%と広い爆発限界を持つ。
さらに発火温度は305℃と低いうえ、銀や銅と反応してアセチリドという爆発性物質となる。
その他の燃料ガス
LPガスは本来無色無臭だが、漏れに気付きやすいよう不快なにおいが付けられている。
空気や酸素と混合すると爆発性混合ガスを形成する。
LPガスは天然ゴム、ブチルゴム、シリコーンゴムを透過、膨潤させるため、LPガスにはニトリルゴムを使用する。
酸素
空気に対する比重は11で重い。
酸素濃度の高い室内などで衣服に火が付くと、例えば酸素濃度が30%程度の空気でもシャツは激しく燃え、消火困難となり重度のやけどを生じる。
液体酸素は沸点が-183℃と低く、液体が皮膚に触れると凍傷を起こす。