初心者向けアーク溶接のコツ「上手に溶接を開始する」編
こんにちは、毎日溶接修行中のイナバです。
この記事では、アーク溶接で
「棒が板にくっついてしまう」という人であったり、
「狙ったところに溶接できない」といった人にむけて、
溶接のスタートをきれいに決めるコツを2つ紹介します。
*この記事は被覆アーク溶接に関する記事です。
*この記事において「アークスタート」とは、溶接開始時のアーク光発生のことを指します。
アーク溶接を華麗にスタート!
まず溶接開始でつまずくポイントと言えば、
「棒が板にくっついてしまう」ということではないでしょうか。
かなりイライラしますよね。
これに関する解決法を2つ紹介します!
ブラッシング法を使う
棒が母材にくっついてしまう初心者にオススメなのは「ブラッシング法」でのアークスタートです。
まず、アークスタートには「ブラッシング法」と「タッピング法」があります。
タッピング法は母材に棒をたたきつけるのに対して、ブラッシング法ではこする動きをします。
こすると言っても、斜めにたたきつけながらこするという感覚です。
斜めからたたきつけつつ、最後は横にそれていくイメージだとやりやすいと思います。
以降は、なぜブラッシング法だとアークスタートがやりやすいのか、
アークの発生原理に触れつつ解説していきますね。
ブラッシング法の詳しい解説
アークは、一度くっついたものが離れるときに発生します。
母材にくっついてしまうという方は、第一段階はクリアしているということですね。
重要なのは、この後の離れる動きです。
タッピング法のばあい、垂直にたたきつけた後の離れる動きがありませんよね。
ブラッシング法では、横にそれていく力がはじめからくわわっています。
くっついた後瞬時にに離れることができるので、良いスタートを切れるのですね。
ブラッシング法を使うときには、たたきつけた後の、引きはがす動きを意識しておこなうといいかもしれません。
地面で心棒を出す
棒を使う前に地面などにたたきつけるのも有効な方法です。
ブラッシング法の解説のなかで、アークは一度くっついたものが離れるときに発生すると書きました。
心棒が露出していると、母材に触れやすくなり、すぐにアークが発生してくれます。
皆さんも経験しているかもしれませんが、新品の棒はアークスタートしやすいですよね。
心棒が表面に出てきているので、電気が通りやすいのです。
被覆材は絶縁ではないものの、経験上、心棒が露出しているほうがスタートがやりやすいです。
なので、(電気の通っていない)地面等にたたきつけて被覆をはがすと、スタートがやりやすいです。
狙ったところへの溶接
アークスタートと同じようにつまづきやすいのが、
「きちんと狙った所で溶接を開始できない」ということだと思います。
もちろん、いいスタートが切れるようになったら、おのずと狙ったところに溶接できるようになると思います。
しかし、次に紹介する方法も有効な手段なので、試してみてください。
捨て板を使う
捨て板とは、溶接には関係ない板のことで、いらない端材などで構いません。
捨て板を溶接したい部分の近くに置き、アースが取れている(アークが発生する)状態にしておきます。
この捨て板に棒をたたきつけてアークを一度発生させた後、
すばやく移動し、ねらった部分でアークスタートをすると高い確率でうまくいきます。
この方法は、アークが発生した直後の棒のほうが、アークが発生しやすいことを利用しています。
また、捨て板を使うことで、勢いよく棒を振ることができますよね。
そのため、板にくっついてしまうということ自体が減り、スムーズに溶接に移ることができます。
溶接個所を狙いながらたたきつけると、どうしても力加減がやさしくなってしまいます。
一度で溶接をはじめようとせずに、アークの発生→溶接開始の2ステップを意識するのが、きれいな溶接スタートを決めるコツですね!
まとめ
アーク溶接の初心者がつまづきやすいポイントとして、
「板に棒がくっつく」「狙った部分に溶接できない」があると思います。
棒がくっつくのに対しては、「ブラッシング法でのアークスタート」「地面で心棒を出す」。
狙った部分への溶接では「捨て板を利用してアークスタートをやりやすくする」という方法を紹介しました。
今回の記事が役に立てば幸いです。
溶接中に気を付けたいコツをまとめた知識編はこちらの記事に書きました!