イナログ

ダイビングの話と鉄工の話。海が好きで造船業界に就職したダイバー兼職人が書いてます。

【書評】AI vs.教科書が読めない子供たちー新時代を生き抜くために必要な能力

 近年、AI技術の目覚ましい発展により、ニュースでも度々取り上げられることがありますね。

「このままでは我々の仕事が奪われるのではないか」

「仕事が奪われようとも新しい仕事が生まれるから心配ないだろう」

「シンギュラリティが起きて人間は不要になるのではないか」

など、様々な意見が飛び交っています。

 

 人間の仕事がAIへの置き換えられるという状況は夢物語ではなく、既に起こっています。

これから確実に訪れる、AIとの共存を求められる未来。

そこで生き残るためのヒントを求めて、この本を読んでみました。

AI vs.教科書が読めない子供たち

https://www.amazon.co.jp/AI-vs-%E6%95%99%E7%A7%91%E6%9B%B8%E3%81%8C%E8%AA%AD%E3%82%81%E3%81%AA%E3%81%84%E5%AD%90%E3%81%A9%E3%82%82%E3%81%9F%E3%81%A1-%E6%96%B0%E4%BA%95-%E7%B4%80%E5%AD%90/dp/4492762396/ref=asap_bc?ie=UTF8

 

 

本の概要

 時間がない方のために大雑把に説明すると、

AI技術の現状と限界、それに対する人間の能力の現状が知れる本です。

特に後半の中高生の読解力に関する調査データは衝撃的です。

全ての教育者は読むべき本です。

それもなるべくデータが古くならないうちに。

著者

2017年から社団法人「教育のための科学研究所」代表理事

一橋大学法学部および、イリノイ大学数学科卒業。

イリノイ大学大学院数学研究科を経て、東京工業大学より博士(理学)。
専門は数理論理学。
2011年より人工知能プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」プロジェクトディレクタを務め、2016年より読解力を診断する「リーディングスキルテスト」の研究開発を主導。
2017年にはTED Conference、2018年には国連にて講演を行った。

 (一部抜粋)

  著者は専門が数学論理であり、コンピュータを動かす大元である数学に精通しています。

このことから、技術的な内容に関してとても正確な印象を受けました。

また、2011年から行っている「東ロボ君」と呼ばれるプロジェクトを通してAI技術の限界についても精通しています。

AI技術と人間の未来

 この本では、「シンギュラリティは起きない。」と明確に断言しています。

ですが、「シンギュラリティが起きないこと」と、「仕事が奪われないこと」は同じではありません。

「AI技術の発展によって、職が奪われる人は確実に増えていく」ということもこの本では述べています。

 

 さらに、「今度の技術革新は、今までのそれとは質が違う」とも述べています。

AI技術によって大量の人材が職を奪われ、仮に新しい仕事が生まれてもその人材すべてを吸収できない、と主張しています。

 

人間に求められる能力

 では、AIに職を奪われないために必要な能力とはなんなのか?ということになりますよね。

それは読解力であると述べています。

意味を理解する力、すなわち読解力こそが、AI技術が最も苦手とする分野だからです。

しかし、その肝心の人間の読解力が、多くの中高生でAIよりも下回るという衝撃の結果がでます。

このままでは「AIにできない仕事をしようとしても、AIよりもできない人材」が大量に排出されることになります。

その決定的な解決策というものはまだわかりません。

ですが、読解力はいつからでも鍛えることができる、ということも著者の経験から述べられています。

 

感想

 「AI技術に対抗するため何をしたらよいか」の本ではなく、「まず敵(AI技術)を知り、己(人間)を知るための現状把握の本」としては最高の本だと感じました。

なので、「AIに対抗するために何を勉強するのが良いか」などの悩みを解決するためにこの本を読むのはお勧めしません。

 

 文章は論理明快でとても分かりやすく、「分かっていること」と「まだ誰も分からないこと」、そして「自分の考え」が混同することなく書いてある印象をうけ、信頼できると感じました。

また、AI技術に関する技術的背景から、論理的に導かれる結論には、納得せざるを得ず、正直この本の内容に疑問を覚える人はいないのではないかという出来です。

それほど納得感のある文章で構成されています。

 

 個人的には、「AI技術の発展により職を奪われた人達は、別の職に就こうにも、そこにもAI技術があるが故に職に就けない。」という主張には衝撃を受けました。

私は、AIが苦手とする「創造性が必要な分野や気持ちを理解する分野」で人間は必要とされるはずなので大丈夫だろうと考えていたのですが、その考えを根底から覆されました。

著者の携わった「リーディングスキルテスト」の結果では、中高生の「読解力(AIの苦手とする分野)」は「AI並み」という衝撃の結果を示したのです。

「AI並み」ということは「AIに置き換え可能」ということです。

本を手に取ってみればわかりますが、正解できないことに驚くレベルです。

 

 早急に中高生の読解力を何とかしなければならない。そう感じました。

でも私には中高生の読解力を何とかする力はありません。

せめて、中高生と関わる立場にある方々に、この本を読んでもらう手助けをすることくらいです。

 

 AI技術の発展に恐怖を感じている人はこの本を読むべきです。

技術的な内容もわかりやすく書いてあり、AIの限界を知ることができます。

そして何より、すべての教育に関わる人に読んでいただきたい一冊です。

というか教育者は読むべきです。

 

まとめ

AI技術の現状とある程度の未来に関して、詳細な知識を得られました。

また、人間の能力の現状を知ることができ、とても勉強になりました。

内容柄、鮮度が重要な本だと思います。

AI技術はこれからもどんどん発展していきますし、本にあるデータも古くなってしまいます。

新鮮なうちにこの本を読んで、そして考えること必要だと感じました。

 

ぜひ読んでください。

https://www.amazon.co.jp/AI-vs-%E6%95%99%E7%A7%91%E6%9B%B8%E3%81%8C%E8%AA%AD%E3%82%81%E3%81%AA%E3%81%84%E5%AD%90%E3%81%A9%E3%82%82%E3%81%9F%E3%81%A1-%E6%96%B0%E4%BA%95-%E7%B4%80%E5%AD%90/dp/4492762396/ref=asap_bc?ie=UTF8