イナログ

ダイビングの話と鉄工の話。海が好きで造船業界に就職したダイバー兼職人が書いてます。

初心者向けアーク溶接のコツ3つ!~頭に入れたい知識編~

 溶接ってとってもむずかしいですよね、私も初めは全くできませんでした。

 

先輩に聞いてみても、「慣れだよ。」しか言ってもらえず、

「正しい方法がわからない!」と悩んでいました。

 

なのでこの記事では、毎日仕事で溶接をしている私が、

「先に頭に入れておくと便利なコツ」を3つ紹介します。

 

内容は電流調整、溶接時の体勢、実際の動かし方の3つです。

 

 

 

超重要!電流調整

 「電流よりも動かし方でしょ。」と思うかもしれませんが、

実は、溶接部の形成に最も影響するのが電流だと言われています。

 

被覆アーク溶接では、「母材への溶け込み」「溶接棒の溶ける速さ」に影響します。

 

適正電流を見極められるようになれば、上達スピードは上がるはずです!

 

箱を見よう

 「じゃあその適正電流はどうやって見つけるの?」という話です。

 

まず、をじっくり観察しましょう。

溶接棒の箱には、画像のように各溶接姿勢に対する適正電流が書かれています。

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箱の種類によって書いてある位置が異なり、場合によってはカタログを参照

まずはこれを把握してから溶接に取り組んでみましょう。

100-130などと書いてある場合は、低い時の方がゆっくり進むことができます。

 

レベルアップしたら、大きい電流の方が良いです。

溶け込みが深く、素早く溶接が終わります!!

 

電流と速度

 溶接電流を調整した後は、ちょうどいい速度で溶接をする必要があります。

 

速度の感覚は体感するしかありませんが、

それが正しかったかどうかは、溶接後に形成されたビードで確認できます。

 

なので、できたビードは毎回しっかりと確認しましょう!!

 

この図を参考に、電流や速度を再調整してみてください。

よく出てくる有名な図なので、頭に入れておくととても便利ですよ!

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電流、速度とビードの関係

 初心者はゆっくり進みがちなので「オーバーラップ」が発生しやすいです。

主に速度が遅すぎることが原因なので、溶接速度での対応が効果的です。

 

適切なビードが形成されていないと、見た目だけでなく強度にも問題があります。

正しい調節できれいに溶接したいですね。

 

初心者は始める前に体勢の確認を!

 「終わりの方で体がきつい」ということはありませんか?

つぎは、「どこから溶接を進めていくのが良いか」という話です。

 

溶接を進めていくと体勢がどんどん変化していきますよね。

「あとちょっとで終わるのに体勢が苦しい」なんてことや、

「溶接をしてても先端がブレブレになってしまう」、

「立ち上がったり、中腰だと全然うまくできない」というのは初心者ならよくあることです。

 

こういった問題に対応するコツを紹介します!

 

スタート時の体勢

 初心者は「スタートしやすい位置」から溶接を始めていると思います。

しかし、これでは後でつらい状態になりやすいです。

 

なので、「終わりの位置が楽な体勢」になるようにしてみましょう!!

 

「きつめの体勢」から「リラックスした体勢」に変化していくイメージです。

 

微妙な変化なのですが、個人的にはとてもオススメです!

 

体を固定する

 もう一つ重要なことは、安定する体勢で溶接を行うことです。

 

壁がある場合は体を当てるなど、体、肘、ひざなど、当てられるところは全部当てましょう。

体が固定され、腕のぶれも少なくなります。

 

このとき、感電には十分すぎるくらい注意して下さい。怪しいようならやめましょう。

電気の方が圧倒的に早いので、気付いてからでは遅いです。

 

溶接した部分は高温ですので、やけどに注意して行ってください。

 

動かし方の基本とコツ

 いよいよ動かし方です。

実際に溶接するときに気を付けるポイントは2つあります!

 

棒の角度と母材との距離です。

この維持が、初心者において一番の難所ですよね。

 

適切な角度と距離を頭に入れた状態で、体に染み込むよう頑張ってください!

 

溶接中のトーチの角度

 垂直から15°くらい傾けましょう。(画像右)

ちなみに、左側に進んでいく場合は前進、右側に進む場合は後進と言われます。

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立て板に対する角度と進行方向に対する角度

 

立て板がある場合の隅肉溶接(画像左)では、二つの板の中間、この場合45°に倒した状態にしたうえで、さらに進行方向に垂直な線に対しては15°倒します。

 

この角度を維持しながら溶接を行いましょう。(これが難しい)

 

母材と溶接棒の距離

 「適切な距離を維持する」というのも難しいポイントです。

 

棒を母材につけてもビードはできるのですが、くっつけないことが望ましいです。

溶接棒の太さ分の距離を離すといわれますが、見た目ではアーク光によってわかりづらいです。

 

従って、溶接中の適切な距離は音で判断しましょう。

 

溶接棒が短くなり母材から離れていくと、「ボー」という音が混ざります。

練習用の鉄板でわざと近づけたり離したりして、音の違いを感じてみてください。

 

この「ボー」という音が混ざらないように、適切な距離を保って溶接できるよう、頑張りましょう!

 

師匠は音を聞いた瞬間に「電流高すぎ。」と判断していました。

恐るべし。

 

まとめ

 いかがだったでしょうか。

被覆アーク溶接のコツを3つご紹介しました。

 

溶接の基本はまず電流。

適正電流の範囲内で、細かく調節すること。

 

体を安定させて、終わりの体勢が楽になる位置取りをすること。

 

角度と距離を保って溶接をし、音を聞くこと。

 

溶接は本当に奥が深く、自分もまだまだです。

体、目、耳と鍛えなきゃいけない部分が多いですが、

今回紹介したコツが知識として皆さんの役に立てば幸いです。

 

アーク溶接を始めるときに棒がくっついてしまう人は、こちらの記事にコツをかきました!

inadive.hatenablog.com

 

参考資料

 最後に、自分が持っている本でこの記事を書く時にも参考にした本を紹介しておきます。

コツが乗っているというよりは溶接自体の仕組みや知識の部分が多い本でした。

 

現場で働く場合でも役に立つと思います。上達したい方は良ければ読んでみてください。

「これだけ!溶接」

著者:野原英孝

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